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執筆者の写真有限会社シューコーポレーション

水物語その96 プラスチック処理の現場取材

三日後。

石油化学工業連盟の会議へと参加しました。

「プラスチック廃棄物の処理を検討するワーキンググループ」

と名前のついたこの会には業界内の優秀な社員が集められていました。

彼らの前で私はまとめ冊子と提案書を見せると

この業界がやるべきことについて、

既に検討されていた計画と一致していました。


それから3か月後の1971年11月。

「社団法人プラスチック処理研究協会」が設立され、

ワーキンググループは広報課として正式な組織になりました。

ワーキンググループ時代の議論で

広報すべきテーマは3つに絞られていました。

1、プラスチックの有用性を知らせること。

2、プラスチック廃棄物を再生加工する実例を紹介すること。

3、一般ごみに含まれるプラスチックごみの適正な処理方法を見つけること。


広報の一環として、最初に私が映像を作ることになったのが

「’72プラスチックを考える」

という102コマのオートスライドです。

これはまだ日本に普及したばかりのプラスチックが

どのように使われ、社会への効果を検証したものです。


シナリオハンチングで全国を廻って、私も詳しく見るのは初めてでしたので、

「こんなところに」とか「これほどまでに」と驚くことがいくつもありました。

特に、10年前から三種の神技と呼ばれた

テレビ・冷蔵庫・洗濯機などで使われる

プラスチック部品の工場はいくつも見ました。

また、今では当たり前になっていますが

農業用のビニールハウスの普及には本当に驚きました。

四国の高知や九州の宮崎、中部の山梨や長野、東北地方に広がるその景色は

当時、都会で暮らす人々にとって想像できない風景でした。

都市部ではマンションと住宅の建設が盛んでしたが

そのためのインフラ=即ち水道と排水に使われる塩ビ管もプラスチックです。

かつての、鉄管や土管での作業を知っている私は

その便利さに感動せざるを得ませんでした。

約2か月間のシナリオハンチングをして

もはやプラスチックなしでは

私たちの暮らしが成り立たなくなってることをまざまざと実感して

「この問題に見通しをつけなければならない」と

あらためて闘志が燃え上がりました。


今でも特に印象に残っている2つがあります。

1つは、ビール瓶のコンテナです。

それまでは松の木の板に釘を打って作られていましたが

ポリプロピレンというプラスチックで一体成型されるようになり、

とにかく壊れなくなりました。

映像の中で、木とプラスチックで使っている部品の差を見せるため、

木のコンテナをバラし、板と釘を並べました。

ズラッと並んだ部品の隣にプラスチック製をひとつ置いた

カットは今も覚えています。


2つ目は、発砲スチロールの魚箱です。

築地の魚市場では、全国から発砲スチロールの箱に

氷詰めされた魚が続々届きます。

その数は膨大なもので、市場の脇に造られた溶融装置で溶かされていました。

溶けたスチロールは幅を40cm〜50cm、厚さ20cmほどの箱型に固められ

中国に輸出されて再生原料になるとのことでした。

一体、何に使われているのか取材しましたが

このときはわかりませんでした。

しかし、次に作った映画「よみがえるプラスチック廃棄物」のロケハンで

中国に輸出された溶かされた魚箱のスチロールから

義務教育低学年の子どもたちの筆箱と定規が作られ、無料で配られていること。

さらに、クリスマスツリーに飾られる点滅するライトを作ってアメリカへ輸出していて

ニューヨークマンハッタンで恒例のクリスマスツリーのライトに使われていると聞きました。

「これは面白い!」と、シナリオ案に盛り込みましたが、

中国の取材許可が降りず、残念ながらボツとなりました。


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