長崎で夫人の話を一緒に聞いていた代理店のMさんは
とても厳しい表情を浮かべていました。
事務所を出て養豚場を離れた後、
「あれほどだとは知らんかったとです。」
と悪臭による苦しみにショックを受けていました。
この現場以降、Mさんは
他の畜産農家へ水つくりを熱心に薦めてくれました。
断られることも多い中、何ヶ所も回ってくれた結果
それでも、福岡県の養豚家で1つ、
そして九州の有明と雲仙の酪農家の2つから注文を取りました。
早速取り付け、まずは6か月間お試ししてもらいました。
有明の酪農家では前回同様効果がはっきり現れ、
悪臭がなくなり、ハエは大幅に減少、
堆肥の醗酵も良くなりました。
何よりも酪農の生命線である、
乳の質と量がぐーんと上がったのです。
また、悪臭とハエがいなくなったことで
牛が自由に歩き回る牛舎内の環境が良くなり
乳房炎の心配が無くなりました。
この現場に続き、代理店Mさんの友人から紹介された
静岡県の養豚家にも設置をしました。
ここでも悪臭が消え、堆肥の出来も格段に上がりました。
また、母豚の出産頭数が安定するようにもなりました。
これは養豚家にとって非常に大きな改善です。
実は豚の出産はとても不安定で、
1回の出産頭数も平均8〜13頭とバラつきがあります。
胎盤からの栄養を全頭に等しく与えることができず
死産、もしくは体の弱い豚が生まれてしまいます。
そういった子豚は離乳時に飲む水で下痢をして
死んでしまうことも多いのです。
2ヶ所で大きな成果を挙げましたが、
残りの福岡と雲仙の2か所はモニター期間終了後に取り外しとなりました。
Mさんへ理由を聞いても
「ちっとは効果のあるごとあるバッテン…」
と答えるのみで詳しい理由は教えてくれませんでした。
畜産業への導入はその後も続きましたが、
効果がでたことで成果が伸び続ける現場もあれば
上手く効果が広がらない現場もあります。
この違いが起きる理由はどこにあるのか?
長年、様々な現場を見てきた上で出たのは
『今までのやり方を変えずに、効くか効かないかだけで判断されてしまうと効果が薄い』
という答えでした。
牛も豚も鶏も、とても繊細な動物たちです。
水が良くなったとしても、
自分たちが暮らす畜舎が掃除されていなければストレスを感じます。
堆肥の原料となるフンにもその影響は如実に現れます。
堆肥も生糞とおがくず・木のチップを
ただ混ぜているだけでは良い発酵をしません。
更に、高い醗酵剤を混ぜたり熱風を吹き込んだりして乾かしてしまうと
自然の発酵を邪魔してしまうのです。
自然の醗酵原理を無視して、効率のみに重きをおいてしまうと
上手くいかないのです。
特に堆肥を作るにはCN比、窒素と炭素の割合が重要です。
実際に、鶏、豚、牛の糞にどれだけのN(窒素)が含まれているのか?
調べるのは非常に大変な作業ですが、
それをはっきりつかんで必要なC(炭素)の量がわかれば
おが屑や稲わら、麦わら、落ち葉、枯草を
どのぐらい混ぜればいいか分かります。
適切な量を混ぜていくと分解するバクテリアが自然に発生して
分解熱を出し、醗酵してくれるのです。
次回はそのことについて詳しくお話しします。
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