事務所に戻るなり、
「子どんらのPTAち、あっでしょがー」と
長崎弁で熱く話し出したご夫人。
それは悪臭の悩みは養豚場内だけではないことに
気付かされたお話しでした。
ご夫婦には高1の長女、中3の長男、小学5年の次男と
3人の子どもがいて、それぞれの授業参観やPTAの集まりには
夫人が参加していました。
朝の仕事を終えた後にシャワーを浴び、
香り付きのシャンプーや石鹸で髪の毛から全身を洗い、
下着から全てを着替えてようやく学校へ向かうのですが
旦那さんへ声をかけるため事務所に立ち寄る
そのたった数分でニオイがついてしまうのです。
いくら周囲に仕事のことを説明していても
教室に入り席に着くと、隣の人がスーっと間を空ける。
これが「一番キツかった」と話していました。
さらに子どもは3人いるので、このような場に
年に10回以上は参加しなければならず
その度に、夫人は悔しく悲しい思いを抱えていました。
しかし水つくりを使い始め、
悪臭が消えてからはそのまま学校へ行っても
誰も離れなくなったのです。
ニオイの心配をしなくてもよくなったことが
とにかく嬉しく、先週も小学校の集まりに行ったら
「不思議そうに見られました!」と
満面の笑みで教えてくれました。
更には、子どもは友達から
「豚飼うの止めたの?」
と聞かれたそうで
「んにゃ!やっちょる!」と自慢するように答えたそうです。
そして自宅の中も大きく変わりました。
食卓の上に常にぶら下がっていた「ハエ取り紙」がいらなくなり、
飛び回っていたハエを追わないで
落ち着いて食事ができるようになったこと。
におい対策で業務用の乾燥機でしか乾かせなかった
洗濯物を外に干せるようになったこと。
いつも窓を開けていられること。
そして、近隣の人々と距離感が縮まって親しくなれたこと。
次々と嬉しそうに話すエピソードの最後には
「これで、娘も安心して嫁に出せます」と語ってくれました。
私は、内水先生の「土と水の自然学」の取材現場で
悪臭に関する悩みをいくつも聞きましたが
夫人の話のように、くらしでの悩みを聞くのは初めてでした。
多くの畜産家がこういう苦しみか悲しい思いしているのだと
知った忘れられない出来事でした。
大村商事の堆肥場で働く二人の担当者も、
現場と自宅は離れていますが
身体に染み付く悪臭にどれほど苦しんでいたか、
想像するに難くありません。
大村社長の信念と、悪臭対策にかける姿勢を
素直に受け止めていたからこそ
技術を磨き続けられたのだとも思います。
しかし、水を変えれば全ての現場がうまく行くかと言うと
そう単純には言い切れないのという問題です。
次回はそのお話しをします。
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