前回までに紹介した大村商事の堆肥つくり成功は
会社にとしても、非常に嬉しい事例でした。
大村商事のような現場に限らず、
農畜産業界ではとにかく「悪臭」は常について回る悩みの種です。
目に見えない「におい」は、現場の担当者にとってはとにかくツラいもので、
大村商事の堆肥担当2人の
悪臭が消えた喜びの実感はこちらにもひしひしと伝わりました。
二人の気持ちを想像できる事例があるので
今回はそのお話をします。
約20年前のことです。
九州長崎の代理店から
「悪臭に困っている養豚家があるから見てやってくれないか」と
相談され、早速向かいました。
そこは長崎空港が見える高台にある養豚場で、
近付くにつれ、悪臭が漂いました。
周辺の土地には、徐々に新しい住宅が建てられており
対策が急がれていることを察しました。
最初に案内されたのはプレハブつくりの堆肥舎です。
中に入ろうと自動のシャッターが開いた途端、
真っ黒い雲が沸き立つようにハエが舞い上がりました。
堆肥の腐敗臭も凄まじく、未だ記憶にあります。
その後、豚舎、飲み水用の水槽、と順番に見て回り、
まずは水槽の水から変えられるなと考えました。
その水槽は四角いコンクリートつくりで、
大きさは4m×2m、深さは2mで上には屋根がついていました。
水槽内はエアーレーションがされていたので
東京から持参したリアクターを
試験的に吊るしてみることにしました。
予備として持って行った腐植ペレットも
網袋に入れて一緒に吊るし、
雲仙火山の軽石と花崗岩もいれると
変化が早いことを伝え、東京へ戻りました。
それから2週間後。
最初に相談してきた代理店から電話で報告を受けました。
「なんか、良かごとあったですよ。豚舎のハエが減りよるです。」
取り付けてから1か月後。
「堆肥舎のハエが減りました。においも薄うなったです。」
2か月後には
「豚舎にも堆肥舎にもハエがおらんようになったです。」
と、報告を受けました。
さらにはオーナーが水の効果に気付き、
ジェット噴射する装置を買い込んで
豚舎をはじめ、堆肥舎や敷地内を毎日順番に洗っているとのことでした。
いよいよ、試験運転が終わる3か月経った時
「オーナーがリアクターば正式に買うと言うてますけん。
一度、来て見てやってください」
と連絡がきたのです。
空港では代理店の彼が満面の笑みで出迎えてくれました。
養豚場はすぐ近くでしたが、車の中で
悪臭が無くなってどんなにオーナーが喜んでいるか
周辺の住民たちがどんなに喜んでいるかを
興奮気味に話してくれました。
「そんにしても、水の力って凄かですねー!
こげんまでとは私も初めて知りました。」
養豚場ではオーナー夫妻が待っていて、
到着するやいなや、すぐに堆肥舎を見せてくれました。
前回と同じようにシャッターを開けてもらうと
舞い上がっていた大量のハエたちはほとんど見当たらず
記憶に残っているあの悪臭もしません。
堆肥の山を掘ると中に白い放線菌がびっしり生えています。
堆肥舎の周りを見ると、
資材と道具がきちんと片付けられ、
敷地内も綺麗になっており、前回と見違えるようでした。
”たった3か月でここまで変わるものか”と感心して
「豚舎の中は?」とオーナーに聞くと
「ハエはおらんです」と即座に返事がありました。
そして最後にリアクターを設置した水槽を覗くと、
なんと渓流藻がひらひらと泳いでいました。
一通り見終わって事務所に戻ると、
夫人が缶コーヒーを私に差し出しながら
堰を切ったように悪臭に悩まされていた今までのことを
滝のように話し始めました。
次回は夫人からのお話しをします。
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