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水物語その81 エゾリスと森の母

1年間の追加撮影を行ったあとは

膨大な映像素材を編集し、

ようやく番組を放送することができました。

番組のはじまりは

猛烈な吹雪の中、木の枝の上で

クルミを食べるエゾリスからです。

スタジオには鈴木さんを呼びました。

冒頭のエゾリスの姿に、

「上手に割って食べるんですね」

と聞き手の見城さんは感心していましたが

「いや、こいつはまだ下手くそですね」

と鈴木さん。

長年追っているからこそわかる違いがあるようです。


雪が溶けた3月はエゾリスの繁殖期です。

この時期になるとメスは人間にはわからない匂いを出します。

それを嗅ぎつけたオスが寄ってくるのですが、

メスは木の枝をあっちへこっちへと

飛び回りオスを焦らします。

オスがギリギリまで近付いたところで

サッと隣の木へと飛び移り、

付いて来られるかを見ているのです。

基本的には1対1ですが、

まれに別のオスが介入し、メスの奪い合いがはじまります。

3匹が木の幹から枝までを駆けずり回るその速さにも

驚きますが、遅れずにしっかりと撮影できている

谷口くんの技術にも感服です。

戦いを終え、無事に勝利したオスは

メスの上に乗り、4〜5回ほど交尾行います

鈴木さんによると、ほとんどがその日の

午前中に終わってしまうようです。

交尾が終わるとオスはどこかへ行ってしまい、

メスは巣に戻ります。

子育てはメスだけで行うのです。

子どもが生まれるのは5月。

大体、一匹のメスから4〜5頭が生まれます。

生まれた時から指と爪は鋭くて大きいのが特徴です。


北海道の夏は1日が永く、

日の出が朝4時、日没が夜8時です。

そのため、子リスの成長も早く

6月には体はまだ小さいですが成獣となり

巣の外へ出てきます。

秋になるとエゾリスのお母さんは

子リス達を連れて別の巣へと引越しをします。

ダニなどの虫が出るようになると移動するようです。

引越しは頻繁に行われるようで

お母さんリスはテリトリーの中に5、6個は

巣を持っているのです。

エゾリスは、木の幹に開いた穴を巣にしていますが

実は、弱った柏の木にエゾアカゲラというキツツキが

コンコンコンと穴を開けてできた穴なのです。

そしてエゾリスと同じ森に住む鳥達も

同じように子育ての巣としていました。


穴を空けたエゾアカゲラはもちろんのこと、

サクラ開化と共に渡って来て、鳴き声のうるさいムクドリ、

賑やかなニューナイスズメ、

そして貴重種のオオコノハズクが暮らしています。

「まるで鳥のアパートかマンションみたいですね」

という見城さんのコメントの通り、

みんな近いところで暮らしているのです。


番組の終盤では鈴木さんが

「神様に与えられた役割」という

柏の実を植える様子をじっくり流しました。

冬に向けての食料を蓄える為ならば、

巣の近くに沢山埋めておくほうが明らかに効率的で

生き延びるためにも有利です。

しかしそうはしないエゾリスの姿に

鈴木さんは深い感謝を込めてコメントしていました。


この回の最後に流した

ナレーションを紹介します。

「北の海に面した苛酷な条件のところでは

 どんぐりの仲間でも柏しか成長できない。

 厳しい潮風に耐えて、柏の木が枝を広げて

 後ろの内陸部を守ってくれている。

 柏は森の母と呼ばれる植物である。

 その柏とエゾリスの深いつながり。

 ”リスを滅ぼすものは森を滅ぼす”という

 ことわざがあることも忘れてはならないだろう」


これまでに紹介した

「野生の王国」北海道シリーズ、

キタキツネ、オジロワシ、サケ、エゾリスの4本は

私にとって「地球自然と生きる」ことがどういうことかを体験させられ

「水」へと向かう、大きなきっかけになっています。

30年以上前の番組にも関わらず、

いまだに新鮮な感動を覚えるには13年に渡って

丹念な記録をしてくれた谷口カメラマンのおかげです。


地球のスケールで悠々と舞うオジロワシの姿

アフリカの森で、優雅としか言えないオカピの歩き

この2つは私にとって

地球自然と生きることのシンボルであり、憧れです。



生まれたばかりのエゾリスの子ども


巣穴から顔を出す子リス / 巣穴から出て遊ぶ様子


エゾリスと同じ柏の森で暮らす鳥達とシマリス


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