サケを捕獲する方法はもちろん
定置網を使ったものだけではありません。
サケの生まれた川に戻ってくるという生態を
活かした方法でも捕獲されていました。
まず、サケは卵から孵ったあと川を下り海へと出ます。
そして太平洋の北側のアリューシャン列島からカナダの沖合で
3年から6年ほど過ごして子孫を残せるまで育ったら
生まれた川に戻って来ます。
あんなに広い海の中で何年も過ごしているのに
どうして生まれた川へ帰ってこれるのか
その体の仕組みはまだ分かっていません。
生まれた川の水が流れ出る河口には
沖合の定置網に掛からなかったサケが
海が盛り上がって見えるほど帰って来ます。
流れ出る川の水と海水が混じる場所で、
体が慣れるまで数日間過ごして、
慣れたものから順番に登り始めます。
この生態を利用し、
川の途中には堰(セキ)と簗(ヤナ)が作られています。
ここで定置網にかからなかったほとんどのサケが捕獲され、
川の横につけられたトラックの水槽へと吸い込まれていくのです。
ここで捕獲したサケは上流の人工孵化場に運ばれます。
本来、長い時間をかけ上流に昇り
卵を産むためこのように捕獲された
サケのお腹の卵はまだ成熟していません。
そのため、人工孵化場には産卵場所の川水を引いて
流れを作った水槽がありその中で卵が熟すまで
サケは泳ぎ続けます。
産卵時期が来るとメスの体には
婚姻色と呼ばれる赤い縞模様が現れ、
オスは鼻先が飛び出してきて
「ハナマガリ」の特徴がみられます。
婚姻色が進んだメスは次々に捕えられ、
腹を裂いて卵が取り出されます。
メス一匹から取り出される卵の数は
約2500〜3000個。
大きなアルミボールが一杯になるまで卵を取り出すと
すぐにオスのお腹をしぼって精子がかけられます。
そして人の手で混ぜるのです。
混ぜる作業を人間の手で行うと、
卵の受精率が100%に近くなるとのことです。
こうして受精した卵は網目の容器に移され、
流れる水の中へと沈められ、余った精子を洗い出します。
そして、自然の産卵場所に似せて造られた水槽に沈められて
孵化するまで過ごします。
取材した孵化場で採卵のため捕獲されるサケは
メスが年間約5万匹、オスが約1万5000匹。
採卵される卵の数はなんと1億粒。
ほとんどが孵化されています。
では、知床のサケが登る川ではどんな自然産卵をするのか、
番組では自然産卵の仕方から、孵化して、育って、
海に出て行くまでの様子を詳しく見ていきます。
野生の王国「秘境知床 日本でここだけ!サケの自然産卵」から
川に作られた堰(セキ)と簗(ヤナ)
人工孵化の工程
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