水物語その75 サケのふ化放流事業①

更新日:4月13日

前回まではキタキツネやオジロワシなど

地上の動物たちのお話をしてきましたが

今回は川と海を旅する「サケ」のお話です。

サケをメインとした回は

野生の王国「秘境知床 日本でここだけ!サケの自然産卵」

とタイトルをつけました。

「日本でここだけ!」につけた

ビックリマークの意味は私自身の驚きであり、

「ここだけ」の意味を日本人のほとんどが

知らないことだと考えたからです。


私たちの食卓にも馴染みのあるサケは

日本では重要な水産資源とされています。

そのため、サケを守るために

明治時代から「ふ化放流事業」が広まりました。

この「ふ化放流事業」とは、

産卵のために川に戻ってきたサケを原則、全て捕獲し、

人間の手によって「ふ化」させるというものです。

自然に生まれた稚魚は体がとても小さいため

海に下っても、十分に泳げなかったり、

天敵に食べられてしまったりする可能性が高いと考えられ

漁獲量が減ってしまうのを防ぐ内容です。

昭和26年には「水産資源保護法」が制定され、

サケが戻ることを確認された日本全国の川で

いまも人工ふ化が行われています。



北海道で人工ふ化事業が始まったのは明治21年です。

設備が整ったふ化工場が次々と作られました。

その数は撮影当時で大小合わせておよそ200ヶ所。


国をあげて行われているふ化放流事業ですが、

遡上が認められなかった知床の小さな川では

今でも産卵のために戻ってきたサケが懸命に川を上る姿が見られます。

小さな川の中で行われる、受精から産卵、

そして自然に卵から孵り、海に下るまでの姿を

谷口カメラマンが水中カメラで詳しく記録していました。


人工ふ化の事実と、命がけの自然産卵とふ化の奇跡、

この2つを子どもたちどのように伝えたら良いだろうか?

悩んだ末、竹田津さんの友人である

野生動物写真家の桜井敦史さんに

語り手ゲストとして出演してもらうことにしました。

桜井さんは長年サケの生態を撮り続けていて、

自然ふ化の様子を見るため知床の近くに移住していました。

番組では知床だけではなくカナダでのサケの実情も交えて

広い視野で語ってくれました。


番組の最初に見せるのは

沖合に仕掛けられた定置網に掛かったサケを引き上げる漁です。

2艘の小舟の縁に並んだヤンシュと呼ばれる漁師が

「ヤーコイ!ヤーコイ!」

と勇ましい声を揃えて網を引き揚げます。

港に水揚げされたサケはメスとオスに分けられます。

メスとオスは顔を見ればすぐ分かるそうです。


分けられたサケは加工場に送られ

メスのお腹からまだ繋がってる筋子が取り出されます。

つながってひとかたまりになっている卵は

まだ完熟していない証拠でこれは「すじこ」として

市場へと送られます。

お腹を開かれ内臓や卵を取り除いたサケは

綺麗に洗って塩をまぶすと「新巻さけ」と書かれた木箱へと

詰められるのです。


番組から少し内容からそれますが、

聞き手の見城さんの

「お正月には欠かせない新巻鮭ですね」というコメントに

「そういえばめっきり食べていないな」と思い出しました。

年々、漁獲量が減っているサケ、しかも新巻鮭は価格も上がる一方で

目にする機会も無くなってしまいました。

いまから70年も前、私が中学生の頃。

暮れに上野の「アメヤ横丁」に連れて行かれて

リュックに新巻鮭を背負わされ、とても重かったことを思い出します。

あの塩っ辛いサケの切り身を焼いて食べた味が懐かしい。

その記憶があるせいか今でも

「サケ弁」を売ってるとつい買ってしまいます。

しかし、かたくて噛むほど美味しい、

あの頃の味には出会えていません。


さて、定置網に掛からなかったサケはどうなるのか?

次回はそのお話をします。



野生の王国「秘境知床 日本でここだけ!サケの自然産卵」から


サケ漁の様子


オスとメスを仕分ける漁師たち


メスのお腹を開いてすじこを取り出している


塩をまぶし新巻鮭として出荷する様子



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