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執筆者の写真有限会社シューコーポレーション

水物語その74 オジロワシの子育て

更新日:2022年4月6日

オジロワシは冬が終わると

寒い地域を目指しシベリアへ帰っていきます。

しかし、何匹かのオジロワシは北海道に残って

巣を作り子育てをします。


オジロワシの巣はとても大きく、

高い木の上につくられています。

すり鉢状の形をしていて

直径は約180cm、厚みは150cmほど。

なんと約一坪ほどの広さがあります。

この大きな巣は太く高い木の上にあり、

なんと地上から27mもの場所に作られていました。

大木の枝分かれしたところに小枝を何層にも積みあげ、

作られたその巣は、代々受け継がれているようで

毎年、北海道に残ったオジロワシはそこで子育てをします。


これだけ大きな巣を作れる場所はやはり限れられており、

道内ではほとんどなく、知床半島と涛沸湖(とうふつこ)の森で発見されています。

そのうちのひとつ、涛沸湖にある巣は

竹田津さんが長年観察していました。

高い木の上にある大きな巣を、

オジロワシに気付かれない場所で綺麗に撮れるポイントを

探すのはなかなか難しく、谷口カメラマンは

「歩くスキー」でとにかく歩いて探し回り

ようやく湖の奥に見つけたそうです。

真冬の間は湖の上から、氷が解けてからはウェットスーツを着て

湖の中へと入り、腰まで浸かった状態でカメラを向けていました。

オジロワシの卵の誕生から子育ての様子、

そして最後の巣立ちまでが刻銘に記録されていました。


オジロワシは2月の下旬に卵を産んで、

メスとオスが交代で温めます。

卵が孵化するまでに期間は約1か月。

3月下旬に、真っ白いうぶ毛に覆われた

小さなヒナの頭が二つ見えました。

親鳥は交代で魚を捕まえに行き、

小さくちぎって二羽のヒナに食べさせます。

「子どもにエサをやるのは嬉しいんですよ。

 子どもが喜ぶとますます嬉しい顔になる」

と、語る竹田津さん。

長年観察しているからこそ分かる表情があるようです。


ヒナのうぶ毛が生え変わるのは6月。

それまでに親鳥はひと時の休みもなしに、

交代でエサを採ってきて食べさせます。

残る親鳥は巣の近くに留まって見張りをします。

まだまだ小さいヒナはカラスに狙われやすく、

大きくなってからも他のオジロワシが襲ってくることがあります。

襲ってくる敵から我が子を守るその姿は実にカッコよく

思わず拍手したくなると番組でも盛り上がりました。


7月になるとうぶ毛が生え変わり

すっかり親鳥と変わらぬ色になったヒナの姿があります。

巣の上で盛んに羽を広げて羽ばたきを繰り返します。

そうやって風を楽しみながら風をつかむことを覚えるのだそうです。


毛も生え変わって体も大きくなったヒナたちは

ある日突然、巣立ちをします。

長年観察している竹田津さんも

「ほんとに突然、巣立つんですね。

なんの前触れも儀式も無しに。」

と言います。

その突然の巣立ちは実に優雅で

巣を飛び出すと、最初はぎこちないものの

すぐに巣の真上を上昇気流に乗って

高く飛んでいき、まーるく円を描いて舞う姿を

たっぷりと見せるのです。


このオジロワシの生態を追った回が

オンエアーされたのは1988年の3月の春休みです。

今から34年前です。


当時からオジロワシが棲息できる環境は

北海道ではほとんど無くなっており、

自然が豊かなイメージのある知床半島でさえ

四か所しか残っていませんでした。


このオンエアーの最後に流れた

竹田津さんと見城さんの会話が番組の本質であり、

核の部分なのですが、映像を流すことができないので

ここに書き起こします。

(敬称略)

竹田津(以下、竹) 「この鳥は天然記念物なんですよ。でも、天然記念物にしたんだから

がんばれやって言ってるだけ」

見城(以下、見) 「周りの環境のことは?」

竹「それについては全く触れていない。勲章やってね、勲章だけで生きていけって」

見「それはちょっと辛いですね」

竹「もう大きな木もなくなりましたし、湖も小さくなって、

シャケは川に上がらなくなったしそれで、勲章があるんだから生きて行けよって。

おかしいですよ」

見「私たちの方で何とか、自然の方も、環境の方もプレゼントしたいですね。」

竹「我々に出来ることはそれだけですよ。」


現地の人によると、オジロワシの環境は当時と変わらないそうです。



~野生の王国「舞え!海を抱く大空の王者オジロワシ 知床」から~


雪の中、卵をあたためるオジロワシ



巣がかなり大きいことが分かる


生まれたての二匹のヒナ(1枚目) / 捕まえてきたエサを与える親鳥(2枚目)


毛色が変わってきたヒナたちとエサを与える様子



見張りをする親鳥


巣立つ直前のヒナ(1枚目) / 風を受けて遊んでいる様子(2~3枚目)



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