水物語その70 キタキツネの子育て

更新日:3月3日

生まれたキタキツネの子どものうぶ毛が生え変わる頃のある日。

それまで仲良くたわむれていた子ども同士が激しく噛みあいます。

それは見ていても痛そう!と感じる激しさで、

母キツネが鼻を二匹の間に突っ込んで分けようとしますが、

すぐには引き離せない激しさです。

それでも何とか引き離し、片方をくわえて巣穴に戻します。

その状態が2日ほど過ぎると、噛み合いをしても、

片方が仰向けになって腹を見せると噛むのを止めます。

あの嚙み合いは。そういうルールが出来るための通過儀礼だったのです。

もっと育って力が強くなってからでは、ほんとうに傷付いてしまいます。

まだ噛む力が弱い時期に学習させているのだと考えられます。

子どもたちがそこまで育つと、オスキツネが子育てに直接参加しはじめます。


余談ですが、オスキツネの子育てシーンは谷口くんにとって

非常に撮影しがいがあったようで沢山の場面が記録されていました。

野生の王国としてのキタキツネの撮影は1年間でしたが、

谷口くんはナチュラルヒストリーの頃から追っていますので

約5年〜6年かけて撮影しています。

おかげで、キタキツネの子育てを細かく紹介することができました。


キタキツネの子育てにおいて、

エサの捕り方や野生を生き抜くための「強さ」を教えるのは

オスの担当です。

最初は捕らえてきたエサを見せて、

すぐに渡さないで追いかけさせてから渡します。

やがて、エサなしでも追いかけさせたり、追いかけたり、

まるで人間の子供が公園でお父さんと

追いかけっこをしているのと似ています。


子キツネたちをたっぷり遊ばせてやって巣穴に戻ってきた

お父さんキツネをお母さんキツネが丁寧に丁寧にグルーミングします。

子キツネたちもすり寄って来て取り囲みます。

その様子に、聞き手の見城美枝子さんが思わず

「わー!お父さんずいぶん感謝されていますねー!」

と嘆声を上げるほどです。

竹田津さんは

「人間で仲の悪い夫婦がいたら、キタキツネのつがいを見せろって言うんですよ。

そのくらい仲が良い!」

そして

「哺乳類で子育てに父親が参加するのは、キタキツネとタヌキと人間だけなんです」

と教えてくれました。


子キツネの成長は早く、1か月も経つと

親キツネと変わらぬくらいの大きさになります。

すると、遊びの内容もエサのネズミやモグラを捕まえるところを見せ、

真似をさせるような内容に変わります。

そうして生まれて約5か月を経過した夏の盛りに、

母キツネは2、3頭ずつ連れ出して一泊二日の旅に出かけます。

旅の目的は、安全に生きていくために必要なことを体験させて学ばせることです。

竹田津さんはこの旅をキタキツネの子の「修学旅行」と名付けています。



映像ー野生の王国「キタキツネの恋と子育てと旅立ち」から


噛み合いをする子キツネ


間に入る母キツネ


子キツネを巣に連れて帰る母キツネ


捕まえたエサを子キツネに見せて、追いかける練習をさせる様子


オスキツネをグルーミングするメスキツネ


オスキツネを取り囲む子キツネたち

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