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執筆者の写真有限会社シューコーポレーション

水物語その165「土と水の自然学」の取材⑱~理論編~

理論編の最後は、<農業システム>についての提言です。

提言の核になるのは、

家畜の糞と尿から良い堆肥と液肥を作ることです。

白板には以下のような図が書かれています。

先ず、先頭に書かれた<畜産業>から真横と真下に2本矢印が伸び

横の矢印の先には<畜産物>が太字で書かれています。

下向きの矢印の先には<尿と糞>そして<醗酵>がセットで囲まれ

その先に<土壌改善><耕作農業>が繋がり

最後の<農作物>が太字で書かれています。

太字で書いた<農作物>から伸びた線は、

最初の<畜産業>に繋がっています。


その図を背景にして内水先生は語ります。

「この図は、まず畜産業があり、畜産物が生まれて

 代謝物=家畜の糞尿が出る。

 それを醗酵させて堆肥と液肥をつくる。

 その堆肥と液肥を土に戻して土壌を改良する。

 その土壌から作物が産まれる。

 その一部が家畜の餌になる。

 というあり方を簡潔に現わしたものです。」

と説明してから、それぞれのポイントについて詳しく語ります。

「この図の中心になるのが、畜産糞尿の醗酵。

 土壌菌群による醗酵によってできるコンポストと液肥。

 大昔から日本では”たいひ” と ”こえ”と呼ばれていたものです。

 近年、日本の土だけでなく文明国の土は

 農薬等によって土の団粒構造が破壊されている。

 その結果として、保水力・保肥力が低下しているという

 状態にあります。

 土壌菌群によって作られた堆肥と液肥を土に戻すことによって

 土の団粒構造が戻る、その中で耕作農業を行う。

 その土に必要な水も、自然の特性を持った水を与えて、

 農作物を作る。

 良い土と良い水で作られた食物は

 中国で古来から言われる

<医食同源><上薬に値する食べもの>になります。

 そして、その一部が家畜の餌になる。」と

内水先生は手に持ったチョークを最初の<畜産業>のところへ戻します。


「畜産は牛・豚・ニワトリたちが畜舎という環境で、

 餌と水と雰囲気という3つの要件が与えられて生きている。

 この3つの要件は全部が揃わなくても良い。

 例えば飲み水を山水なみのものを与える。

 餌を上薬に値するもの、

 又は土壌菌によって醗酵されたものを与える。

 畜舎の雰囲気は、

 踏み込みであれば土壌菌群が生き生きと棲んでいる地面。

 スノコ舎では下の水が液肥並みのもの。

 この3つの内の一つが傑出したものであれば

 他の2つを吸収してしまうことができる。

 そうなることによって家畜が健康になり、

 提供される肉、ミルク、卵が上薬並みのものになる。

 同時に、生産効率もよくなる。」

内水先生は少し間をおいて糞尿の醗酵に戻ります。

「こうして出された家畜の糞と尿には

 土壌菌群が真っ当に棲息していて、

 スムーズに自然の醗酵をして、

 楽に堆肥や液肥ができる。

 それを土に戻すことによって、団粒構造が産まれ、

 腐食が生成される土壌ができる。

 これこそが自然の輪廻を取り込んだ

 <本来の農業の姿である>と思うわけです。」

一旦座った先生は、再び立ち上がり

現代の農薬について述べます。

「健全に健康に家畜を飼っても病気にならないとは言えない。

 そこに現代の知恵として、サポート部隊として農薬がある。

 それを出来る限り少量もちいて自然の状態を取り戻す。

 ということはあっても良いのです。」

そしてラストシーンは

昔ながらの農家が山から引いた水で作った池の畔で

盟友の長崎浩さんの質問に答えます。

「こういう自然の系というのは壊れることはないのですか。」

「土壌菌群が30億年かけて造ってきた系だから

 少々乱暴なことをしても壊れないと思うね。」

「しかし、局所的に壊している現実があります。」

「自然の在り様を知って、

 ほんのちょっと後押しすれば、必ず戻る。

 まず、局所の狭い所で完結した自然の系をつくる。

 それを繋げてもう一つ上の系をつくる。

 それを重ねて行くしかないのじゃないかな。」

と結んで理論編は終わります。

池の前で語り合う二人の映像に

内水護理学博士の略歴がテロップで流れます。


1934年生まれ

大阪大学産業科学研究所、東京都公害研究所を経て

現在、中小企業事業団専門委員

〇著書

・収奪者としての国家

・資料 足尾鉱毒事件

・自然と輪廻(りんね)

・土と水の自然学

・蘊奥(うんのう) 自然学 他

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