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執筆者の写真有限会社シューコーポレーション

水物語その16 瓢箪池に映る自然の影

私に自然の原理を教えてくれる大切な教師になった自宅の瓢箪池は、広さがちょうど畳1畳ほど、深さは35~40cm、中央に深い窪みがあります。

この瓢箪形の池は、1962 年に父が定年退職後に購入した家に付いていたものです。

購入と同時に私は京都に移り棲み、弟夫婦が父母と一緒に暮らし始めました。


弟の妻は後の生物学博士・団まりなさんで、当時は大学院生でした。

彼女の専門は発生生物でしたので、修士論文の為に瓢箪池でアメリカ食用ガエルを飼って、

産卵と孵化の観察と実験をしたようです。


10年後の1971年に、弟とまりなさんは大阪の大学へ移り、入れ替えに私が京都から戻り、父母と一緒に暮らし始めました。

まりなさんが実験に使われた瓢箪池には、大きなアメリカ食用カエルが

住み着いていました。

初夏の夜になるとカバのような大きな声で唸ります。

4,5匹がいっせいに泣き出すと大変な騒音で、オーケストラのコントラバスが

並んで弾かれているようです。

梅雨になると池一杯に卵を産み付け、オスがメスに抱きついて離れなくなったペアーが浮かんでいます。

私は、そのペアーを毎日捕まえて近くの多摩川に離しに行きました。

ペアーが次々に産むので、卵が盛り上がるように増えて、ついには酸欠で全滅、そして腐ってしまいます。

その悪臭は隣の家が窓を閉めるほど強烈でした。

私はマスクをして庭に穴を掘り、腐って崩れた卵をその穴に埋め、池をブラシで洗って水を全部入れ替えました。

この大変な作業は、カエルがひとつがいだけになった年に海外ロケで長期不在にしてしまったがために、沢山のカエルを誕生させてしまい、内水先生に出会うまで17年間続いたのでした。

1989年に内水先生を取材して制作した「土と水の自然学」で“良い土が水をきれいにする”ことを知り、“今年は瓢箪池に庭の土を入れてみよう!”と考え、スコップで5,6杯、卵だらけの池に入れてみました。

すると2,3日後に見ると大分きれいになり、もう一度土を振り掛けて、掻き混ぜてみたところ、ついに悪臭がしなくなりました。

これを見て、私は

“効いてるなー、内水さんの言うことはやはり本当だ”

と安心していましたら、

1週間くらい経ったある日再び事件が起こります。

同居していた母が

「池にボーフラが大発生している!」

と騒ぐのです。

池を見ると本当にボーフラがうじゃうじゃ湧いていたのです。

急いで200円の金魚を20匹飼ってきて瓢箪池に入れます。

(ボーフラは金魚にとって最高の餌です。)

ついでにホテイ草と水草も入れました。

ボーフラは食べ尽くされて蚊の大発生もなく金魚は元気に育ちました。

その後に出現する大カエルは片っ端から捕まえて多摩川へ放ちました。

これが、池から学んだ最初の自然学です。

そしてその年の11月末、また母が騒ぎます。

「誰が池に牛乳を入れたの!?」

“牛乳??誰も入れるわけないでしょ!”

しかし池を見ると本当に真っ白です。

何が起きているのかすぐには解りませんでした。

そして白いものは4~5日で消えましたのでそのまま忘れておりました。

ところが翌年の2月に再び同じことが起きます。

前回と比較すると薄くまだらでした。

そして2~3日でまたしても消えてしまいました。

さらにその年の11月にやはり白くなりましたが、今度は透明感がある白色でした。

何が起きているのか、当時の私は皆目見当がつきませんでした。


このことを2年後に内水先生にお会いする機会がありそれとなく話題に出してみたところ

「それは放線菌だね。放線菌は根源菌だから、夏の常在菌群が一旦放線菌に戻って

冬の環境に合う菌群に変成しているのだと見てよいね。」

と言われました。

そして

「だんだん薄くなる理由は菌群が学習したからだよ。菌群の学習と池の底土に記憶されているものの相乗作用と考えたらいいじゃないかな。沼の底質にはロムのような働きがあるからね」(ロムとは、記憶媒体のことです)

そこで私は

「人間の体の中でも季節に合わせて体内常在菌は変成しているのでしょうか?」

と尋ねました。

「変成しているのかもしれないね。水が変わると下痢をするからね。」

「はー、あの下痢は変成しきれないで死んだ腸内細菌の排泄だったのですか」

「そういうことだね。」

「90に近いお袋は池が白くなると具合が悪くなります。どこがと言うのではなく体全体の調子が悪くなります。」

「体が老化すると体内常在菌の変成がスムースに出来なくなるからでしょうね」

「私たちのような若い体の中でも夏から冬、冬から夏への体内常在菌の変成が起きている。若いとそれがスムースに行われているから、感じられないと言うことでしょうか?」

「そういうことでしょうね。」

こんな重要なことを、瓢箪池は19年も掛けて

私に教えてくれたのでした。

<余談>

瓢箪池のある家に移り住み、内水先生に出会うまでの17年の間に、私は様々外国取材を重ねていました。

中でも、フィリピンとベトナムへは何度も訪れました。

取材地は大体奥地ですので、飲料水は現地のものを使い、飲用もします。

この時決まって、最初の時は激しい下痢をし、2度目からは初日目以降は下痢をしなくなります。

ご経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これは瓢箪池での学びや内水先生とのお話を踏まえると最初の訪問の際に飲んだ水を体が覚えていて、2度目の訪問以降は1日の間に体内常在菌群が変成したのだと考えられます。

昔の日本では、旅に出ると「水に当たる」と言われていました。

何時も生活している土地から他の地へ初めて旅をすると飲む水が変わるので下痢をして、酷い時には死に至ったのです。


だから、旅に出る時は「みずさかずき」を交わして別れたのです。

旅に慣れている人はなんともなかったのは、体が色々な水を覚えていて

体内常在菌群がスムースに変成したのだろうと、今からは考えられます。​

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