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執筆者の写真有限会社シューコーポレーション

水物語その154「土と水の自然学」の取材⑧~農業編~

最後は三重県の養豚場です。

三重の山々を背景にした養豚場の全景にタイトルが出ます。

「矢部種豚場

 三重県度会郡度会町」

「経営規模

 一貫1000頭

 訪問日1989年1月25日」

 


 

タイトルが終わると

経営者の矢部さんが自慢の種オス豚を

細長い竹一本で自在に操り、

種付け豚舎へ誘導する様子が映ります。

 

実は、矢部さんの種オス豚は

世界雑誌LIFE(ライフ)の表紙を飾ったことがあります。



実は、このシーンの冒頭から

四国の養豚家・近森さんの声が流れています。

 

「三重県の矢部さん。

 今から三か月前になりますが、

 矢部さんのところは悪臭タラタラだということで、

 毎晩1時間から2時間、

 電話がかかってきてたんです。

 飲料水の質が悪いと。

 そして、内水先生の指導で水改善の設置をしたと連絡がきて

 その2週間後です!

 ”やー!すごいことになった!”

 といろいろ言うんで、私もマサカと思ったんですが、

 60日目にお伺いしたんです。

 そしたら、水のことでは

 先行していたはずの私のところより

 非常に良くなっている。

 ということで、3か月前には彼に教えていた私が、

 逆に私がいろいろ教えられている

 現状でございます。」

 

映像は、途中から矢部さんが新しく設置したコンクリート製の水槽へ向かう

内水先生一行になります。

コンクリート製水槽の大きさは、高さ1.5m、幅1m,長さ2m、

水槽に被せてあったブルーシートを外して、

まず、水道原水のカルキの濃度を確かめます。




 矢部さんが

「ここの水道水のカルキはそんなに濃くは無いんです。

 ただ透明で固い感じだったけど、

 腐植を入れてエアレーションしたら

 丸くなって甘くなりました」

水槽の水をコップに汲み、

みんなうなずき確かめます。


水槽の水を飲んで確かめる様子

 

続いてのシーンは豚舎の尿ダメの状態を見ます。

分娩、母豚、育成と分かれている豚舎全て見ていきます。

人間も健康診断で尿と糞を検査しますが、

それと同じで、糞と尿の状態を見れば

豚たちの健康状態が分かるからです。

矢部さんはどの豚舎の尿ダメも水を変えてから

2週間で臭いがしなくなったといいます。

 

「近所の毎日遊びに来る女の子がいるんですが、

”おばちゃんブタいなくなったの?””いや、いるよ”って言ったら

”ブタの臭いがしなくなった”と言ったんです。

そのくらい臭い減りましたね」

 

と矢部さんはうれしそうに話します。

 

その後、素掘りの溜池に移動します。

「ここに全部の豚舎から集まります。」

という溜池の広さは縦横が7メートル程。


最初の溜池


 

最初の溜池の表面には黒いスカム(汚泥)が浮いていますが

矢部さんが長い棒で掻き混ぜると消えてしまいます。

その様子に内水先生は

「悪い状態の時は浮かび上がったスカムがカチカチになる。

 ああなるとどうしようもなくなる。」

と説明します。

「これはどうして消えるのでしょう?」

「汚泥になってるからですよ。」

「ああ、汚泥ですか」

と納得する矢部さんですが

これが一体どういう意味を表すのか説明します。

 

良い水の中に糞尿などの有機物が溶け込んでいると

分子レベルに分解され、一部はガス化して蒸発します。

しかし、一部は再結合して重くなって沈んでいきます。

この沈んで底に溜まったものの名前が「汚泥」です。

ですから、臭くない良い汚泥が出来るのは

良い水だからと言えるのです。

今回はここまで、続きは次回です。

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