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水物語その141 林竹二さんの授業②

ビーバーが作ったダムは

洪水で流されて巣がむき出しになってしまいました。

この時、ビーバーは逃げ出すか、

それともダムをもう一度作り直すか。


「ここまではビーバーについての勉強だったけど

これからが人間についての勉強ですね」

林先生はにこにこと生徒へ問いかけます。


どのような工程でダムを作り、

それがどんなに大変な作業であるかは

いくつもの写真を見せ、既に伝えてあります。

子どもたちはビーバーがどう行動するのか

本気で考え、悩みます。

その姿を見て林先生は

「君たちだったらどうする?」と質問すると

「なぜ流れたかを考えるね、壊れた原因を調べる。」

と声が上がります。

先生は黒板に”原因を調べる”と書き

「そして、悪いところを取り除いて作り直しますね」

と促すように子どもたちへ聞くと彼らは嬉しそうに

「はーい」や「うんうん」とうなずきます。

「そんなことビーバーにはできるかな?」と畳みかけると

「できません!」「いいえ!」と一段と大きな声で答える子どもたち。



そこから林先生は

動物と人間の「知恵」の違いについて

社会の実例をいくつか取り上げながら

彼らへ話します。


ビーバーのダムや巣をつくる知恵は親から教わったもので

ダムが壊れても同じように作り直す。

それはこれからも変わらないこと。

しかし、人間はダムが流されたら

「原因」を見つけてより強いダムを作る。

新しいダムが壊れたら更に「原因」を見つけてまた作り直す。

このような人間の知恵は親からもらってきたものだけではなく

そこに自らが学んだ知識や経験が積み重ねてできていること。


そして最後に

「今日はビーバーの勉強だったかな?人間の勉強だったかな?」

と尋ねると

「にんげん!!」と子どもたちが大きな声で答えます。

その響きから彼らの喜びがひしひしと感じ取れました。


子どもたちの喜びとは反対に私は

大きなショックを受けていました。

こんなに根源的なことを小学3年生に

明快かつ確実に伝え、浸み込ませるとは

何たる授業かとあまりの素晴らしさに呆然としていたのです。


休み時間に先生の控室へ伺うと

「どうでしたか?」と尋ねられました。

他のスタッフが何と答えていたかは覚えていませんが

私が「本では分かりませんでした。」

と正直に答えました。

「あの雰囲気。先生と子どもたちが一体になって進む、

あの雰囲気は本からは分かりませんでした。」

と答える私に先生は

「そのことが映画には撮れますか?」

と即座に切り返し私たちスタッフ一同

「ウッ!」と詰まり、返答することができませんでした。

次は5年生への授業を見学です。

授業が始まるまでの間、私たちスタッフは体育館で

バスケットボールでシュートをしたりして過ごしていましたが

誰も一言も話さなかったことを覚えています。


5年生への「人間について」の授業は

午前の最後に行われました。

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