ヨーロッパとアメリカの映像を観た意見交換のため、改めて委員会が開かれました。
当時は「プラスチックは環境や人間にとって悪である」という風潮が蔓延していましたので、
それをなくしてプラスチックに対する正しい知識を持ってもらうために委員は全員が真剣でした。
プラスチックから始まったごみ問題ではありましたが、ごみは世界共通の社会の問題でした。
「ごみ」の在り方は各国のもつ歴史や文化、そして現在の暮らしを如実に象徴しています。
どんな人々が住んでいるのか、どのような地域を作ろうとしているのか、その国の全ての在り様が透けて見えてくるのです。
映画の狙いもそこにありました。
「プラスチックが無くなればごみ問題はなくなる」
と言われるほどに広がったヒステリックな風潮を鎮め、誰も逃れることのできないテーマであるごみ問題を地域社会つくりの素材として考えてもらおうと、映画の狙いを定めて作りました。
出来上がった映画は総論編として「ごみと社会ー世界のごみ処理システム」、
歴史や生活習慣との関係を詳しく紹介した「ヨーロッパごみ資源化システム」、
アメリカでの取組みを紹介した「ごみに挑むアメリカ」、
以上の3本に分けたビデオ作品となりました。
プラ協で広報担当だった伊佐治さんが、早速映画の資料を作成し新聞各社に送りました。
伊佐治さんはIPR(インターナショナル・パブリック・リレーション)という会社から
出向しており、以前は新日本製鐵の社内報を作成していたので大手新聞社との人脈があったのです。
朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の文化担当記者にまずは映画を見てもらい、
その後でプラ協の狙いやごみ問題の深さを説明し、ビデオは無料で貸出すことを伝えました。
その結果、各新聞の文化欄に写真入りの大きなスペースで紹介されました。
これを見た日本中の自治体や住民運動の団体から貸出し申込みが殺到し、
最終的には170本のコピーをつくり、映画は3本含めて2年間で合計2000回以上も貸出されたのです。
ドキュメンタリー映画としては異例の数字でした。
ごみ問題にどう向き合い、どのように取り組んでいくべきか、悩み考えている人々が多い証拠でした。
プラ協の広報委員会は反響の大きさに盛り上がり、人々の社会問題意識を高めるチャンスだと次の映画を作る企画に取り組みました。
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