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水物語その121 アメリカのごみ処理事情⑧

更新日:2023年4月21日

ヒューストンから飛行機でロサンゼルスに入ったのは、その日の夕方でした。

近郊の森で山火事が起きていると機内放送が流れ、ホテル到着後も部屋にあるテレビをつけると、炎が燃え広がる映像が盛んに映し出されていました。

移動続きで疲れきっていた私たちは、この山火事が明日の取材に支障を来すとは知らないま

早々に寝床にはいったのです。


翌日の月曜日。

朝9時前に市役所に着くと、消防服姿の職員があわただしく動き回っていて、山火事の対応に追われていることを察しました。


窓口の職員に4階の会議室へ案内され、予定通り10時から清掃局担当者レイビック氏へのインタビューを始めました。

ロサンゼルスは映画「ごみと社会」を製作するにおいて、とても期待のできる取材地でした。

早い段階でごみ処理対応に取り掛かっており、内容も非常に大規模なものでした。

このことは見聞記にも次のように記されていました。


「ロサンゼルスは広大な車都市である。そのため厨芥(ちゅうかい)(=生ごみ)は各家庭に設けられたディスポーザーにかけて、汚水と一緒に下水道を通してメタンガスプラントへ送られ、そこでメタンガスを回収して隣の火力発電所に売却し、残渣は70キロ沖合の海に投棄している。

その事業は、ロサンゼルス群78自治体が共同経営する大事業団によって行われており、我々の映画のテーマ「ごみと社会」には絶好の題材になると思われた。」


この事業は50年以上前から取り組まれており、現在では全ての家庭にディスポーザーが設置されていて、ディスポーザーでジュースになった生ごみは地形を利用した流下方式で海岸にあるメタンガスプラントに送られていました。

そのメタンガスプラントは、この清掃局から何と南に120kmも下ったところにありました。

また、ロサンゼルス市にはごみ焼却場が一つもなく、生ごみ以外のごみは全て埋め立て処理されていました。


私たちはこのメタンガスプラントをヘリコプターで取材する計画でしたが、

昨日からの山火事の影響でヘリコプターの飛行が中止になってしまったのです。


インタビュー撮影を終えた清掃局担当者レイビック氏は私たちの撮影計画を聞いて、

「impossible (不可能だ)」と何度も首を横に振っていました。


しかし私たちの計画では、撮影は2日間で、両日ともにメタンガスプラントを取材する予定だったのです。

それを知ったレイビック氏は、なんとも呆れた顔をしていました。

不測の事態ではあったとしても、自分たちの計画が甘かったことを反省しつつ、どうにか撮影できるものはないかと話し合い、

家庭に設置されている「ディスポーザー」を取材できないかとレイビック氏に依頼しました。

突然のリクエストだったのでしばらく思案していましたが、

「では、明日の12時半に私の家に来てください」となんとか承諾してくれました。


次の日。

彼の住まいは3階建ての集合住宅の最上階でした。

夫人と一緒に待っていてくれて、バスルームにあるトイレ脇に設置されたディスポーザーを見せてくれました。

直径が20cm、高さが40cmほどの円筒形で、中には回転する羽刃が付いていました。

夫人に協力してもらい、生ごみを入れて処理する様子も無事撮影することが出来たのです。

撮影を終えた後、レイビック氏は、

「生ごみでない物を入れて故障させる住民が居る。その度に修理して説明しているが、無くならない。」

と話してくれました。


ロサンゼルスとニューヨークは世界中の人種が集まる都市のため、それぞれ異なった生活習慣を持っています。

統一したごみ処理システムを実現するためには、ルールを守ってもらうことが何より大事ですが、

それをさまざまな国から来た人に浸透させることがどんなに大変なことであるかを、つくづく知らされたアメリカの取材でした。

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