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執筆者の写真有限会社シューコーポレーション

水物語その118 アメリカのごみ処理事情⑤

ニューヨークへはバスで向かうことになりました。

その時の様子を青柳さんが見聞記にこう書き記しています。


「ニューヨークは11月5日の夕方に入ったのだが、近付くにつれてエンパイヤステートビル頭頂の鉄塔だけが光を受けて鮮やかに見えた。

アメリカ中で電力の節約が叫ばれていて、他のビルはシルエットで黒々と建っていた。

ハドソン川の底を渡るトンネルを抜けると、ネオンが輝き、商店は活気に満ちていて、

店頭では大声で脚を呼ぶ声が響いていた。」


翌朝、ニューヨーク市庁舎を午前9時に尋ねると、

中年の受付嬢が「ついて来い」のジェスチャーで庁舎を出て

道を挟んだ隣のビルへと案内してくれました。


余談ですが、ニューヨークの市庁舎は1803年から1812年にかけて建設され、

1966年に国家歴史登録財とされています。

見た目にも美しく、この中で取材するのかとウキウキしていたのですが、

残念ながら訪問する清掃局は別の建物の中にあり入ることはできませんでした。


案内された2階の角部屋でインタビューを行うことになりました。


対応してくれたのは、清掃部長のオーレリイ氏でした。

すらりと背が高く肩まで伸びた髪はちじれていて、清掃局の青い制服も直前まで現場にいたように汚れていました。

ニューヨーク市の地図が貼ってある壁を背景に、椅子に座ってもらい撮影を始めました。

青柳さんの質問に、低い声で丁寧に答えながらも、時折自分の手の真っ黒な爪を見つめる姿を見ていて、「誠実な方だな」と感じました。

ごみの現状にいくつか答えてもらってから、

オーレリイ氏が責任者になって作成したという「ニューヨークの将来計画図」を説明してもらいました。


オーレリイ氏は

「毎日膨大な量が出る巨大都市のごみを適切に処理するにはこの方法しかないと思う。

しかし、これは今は市議会で審議中ですが、財政難で承認されないでしょう。」

と冷静に言いました。


メインのインタビューを終えた後、私がオーレリイ氏自身について質問しました。

彼はニューヨーク生まれの当時42歳。

祖父がアイルランドからの移民なので、アイリッシュクウォーター、つまり4分の1のアイルランド人。

ニューヨーク市立大学を奨学金で卒業したのち、すぐに市役所へ入所。

いくつもの部署を経験して、自ら選んで清掃局へ入り、

以来14年間勤めていて、5年前からは清掃部長になったということでした。


「あなたのように清掃局に長く務めた人は他にいますか?」

と尋ねたら、残念そうに首をゆっくり横に振りました。


将来の夢を聞くと

「ニューヨークには移民が多く、自然にごみを窓から捨てている。その子の次の世代にならないと、この習慣は無くならないでしょう。

私の使命は、それを少しでも早めることです。」

と答えてくれました。

低い声で語っていた彼の姿は今でも印象深く残っています。


次回は、ニューヨークの街のごみ収集と埋立地の実情です。


<「ニューヨークの将来計画図」>


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