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執筆者の写真有限会社シューコーポレーション

水物語その105 オランダのごみ処理事情

翌日は空路でパリからオランダの首都アムステルダムへ飛び、

車で5時間かけて取材地のロッテルダムに入りました。

着いた時は夜でしたので判りませんでしたが、

翌朝早くホテルを出て街を見てみると、

歩道にごみ袋が10メートル間隔で積まれていました。

その日がごみ収集日のようで、間もなく取集車が来て

制服を着た二人の作業員が手際よく

パッカー車の後ろに積み込んで行きました。

ごみを収集した後には何も残っていなくて、

見渡すとどこもとても清潔な感じでした。

”パリとは大分違うな”と感じ、ホテルへ戻って朝食を取りました。


ロッテルダムでの取材目的は、ごみ焼却施設2箇所の実情です。

まず、市役所の清掃事務所に行って、全体の状況を聞きました。

その時の様子を飯島さんは見聞記に次のように書いています。

「清掃事務所は、ごみ積み替え所に隣接して運河のそばにあった。

 会議室の下まで運河が入り込んでいて、釣りをしている人が見え、

 ヨットやモターボートもつながれていて、いかにものどかな風景であった。」


清掃事務所では市の広報担当者がインタビューに答えてくれました。

ロッテルダム市には市営と私企業の焼却場が1か所ずつあり

市営では家庭から出る可燃ごみが、

私企業では産業と商業から出る可燃ごみが

焼却処理されていました。


ごみの焼却処理が始まったのは1912年日本の大正元年で、

始めから発電と地域への熱供給を行っていました。


生ごみは別に集めて人間の排泄物と一緒に堆肥にしているとのことです。

その堆肥の使い道を尋ねると

チュッリプ栽培や野菜畑と牧草地に撒いているとのことでした。

残念ながら、撮影項目に入っていませんでしたので、見ることはできませんでした。


広報担当者に

「今朝、ホテルの前でごみを収集車が積むのを見たのですが

ごみの出し方も収集後もとても清潔でした」と感想を述べると

ロッテルダムは名前の通りロッテ川に堤防即ちダムを築いて

人工的に作られた都市であるから

「街中を家の中のようにいつも清潔に保たなけれなならない。」

だから、

「幼児の時から教育を徹底している」と

全家庭に配布している”すごろく”など13種類の教材を見せてくれました。


 子供教育用の教材の一部 >

さらに、市には50人のごみに関わるインスペクターがいて

市内を毎日巡回し、住民と親しく接して指導しているとのことです。

インスペクターには警察官と同じ権限が与えられており

「ごみを取集する役、積み替え場で働く者、焼却場の技術者の方々、

ごみに関わる全ての職員は責任と誇りを持って働いています。

 市民からも尊敬されています」

と広報担当者は、誇張ではなく、普通で当然ですという感じで言いました。

全体に成熟した”大人な感じの社会だな”という印象を強く感じました。


<パトロールするインスペクターと堀田泰寛カメラマン>

オランダ国は日本が鎖国をしていた江戸時代の300年間、大きな役割を果たした国です。

長崎の出島を窓口にして世界の情況を伝えており、その知識は”蘭学”として、広く受け入れられていました。

当時のオランダは東インド会社を作り、アジアの国を支配した世界の強国でした。


そんな国が今では人が楽しく綺麗に生きることを大切にする、円熟した国になっているのです。

もっと深く知りたいと思いましたが、

2か所の焼却場を撮影するための二日間のスケジュールしかなく、

それ以上の取材は断念せざるを得ませんでした。
















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