水物語その1 はじめに

これから「水」のことについて

長い長いお話をします。

私、惣川修は、30歳から50歳まで、

日本でドキュメントを作ってきた映像作家です。

34歳の時に

小学校教材映画「流れる水の働き」と

産業映画「水―未来を私たちの手で」という

水処理技術を紹介する作品の

シナリオを書きました。

「流れる水の働き」は、

山に降った雨水が、

山の土と大小の石ころを流して、

低地に平原を造成する何億年もの作業を

映像で証明したものです。

監督で友人の庭に手作りのセットを作って

撮影しました。

今のように何台ものカメラで

同時に撮ることができない時代ですから、

何度も何度も同じ作業を繰り返し、

ロングショットとアップショットを撮りました。

前に撮影した映像と次の映像が違っていたら

つながりませんので、

それはそれは大変な作業でした。

今のビデオのように撮影した映像を

すぐには見れないのですから。

​​

しかし、この仕事で、

水はそのままでは大きな石を

押し流すことはできませんが、

大小の石 と土と混ざると、

驚くべき力を発揮して、

大地を、平野を造成するということを

嫌というほど知りました。

最後に、そのようにして出来た堆積層の平野を

空撮までしましたから、

若い私にとっては強烈な刻印でした。

​​

「水―未来を私たちの手で」は、

今では「活性汚泥法」と言われる

水処理技術と装置を紹介するものです。

​​

当時1972年頃は、

環境汚染が大問題だった時で、

大気汚染・水汚染・農 薬汚染・添加物問題が

社会を覆っていました。

その中で、

自然原理の技術で工場廃液などの

汚れた水をきれいにする技術と

その実際を解説紹介する内容です。

シナリオ担当の私は、

この技術を採用している全国の先端企業、

鉄鋼業や化学工場の現場を見て、

担当の技術者に詳細を聞き取りました。

​​

「活性汚泥」=汚泥が単なる泥ではなく、

水の中に溶け込んだ

汚いもの・毒物・余計なものを吸着して

沈殿することによって、

水をきれいにする=そんな働きがある泥

=活性力を持つ泥、

そんな泥を使ってどんなに汚れた水でも、

魚が棲める水にする技術です。

​​

どうしてそんなことが起きるのかの

科学的な解析を聞き、

その原理をアニメーションにしましたが、

私が感銘を受け、このことを見る人に

ぜひ伝えたいと思ったことは、

自然本来の泥にはこの作用力があり、

この作用力が無ければ、

地球上の水は汚れたままで毒が滞り、

すべての生命は生き続けて来れなかったのだ

という事実でした。

監督は盟友・小泉修吉(氏とはその後も何本も映画を作りました)の名編集もあって、

この映画は、その年の産業映画コンクールで

産業大臣賞を受賞しました。

​​

映像作家になってすぐに

この2つの水に関わる作品を作ったことが、

私の生涯を決めたのだ と、今からは思いますが、

当時は気が付きません。

「水」だ!ということにも、

まだ思い至 っていなかったのです。

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